ITにおける製造物責任法(PL法)の対象とは?

ITを導入するにあたり、製造物責任法に関して知っておく必要があります。

ITを導入するには、多くの機材などを使うケースが多いです。

この機材に欠陥があり、その欠陥が原因で身体的また会社に財産に損害があった場合は損害賠償をすることができます。

この記事ではITにおける製造物責任法(PL法)とは?また対象となるものを説明していきます。

 

 

製造物責任法(PL法)とは

製造物責任法またPL法ともいわれており、制作した製造物を使っているうちに、欠陥が原因で怪我をしたり他に被害を受けたときに損害賠償をすることができる法律です。

IT関連のシステムなどを導入する場合、機材を購入するケースがあります。

この機材によって怪我をしたり、他の会社の財産などに被害があった場合、欠陥が認められたら損害賠償をすることができるのです。

 

製造物責任法(PL法)の概要

制作したものの欠陥により、財産もしくは身体に損害を受けた場合は被害者が損害賠償を求めることができます。

民法の第709条にて以下のように記されています。

(不法行為による損害賠償)

第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

引用:民法

 

 

製造物責任法(PL法)の目的

製造物責任法の目的としては、以下のように記されています。

製造物の欠陥により、利用者の安全を守ることが目的です。

(目的)

第一条 この法律は、製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

引用:製造物責任法

 

製造物責任法(PL法)の定義

製造法責任法は製造物に対してのものをいいます。

そのため幅広い製品に対して適用することになります。

もちろんIT関連のシステムや必要機材などにもあてはまります。

ソフトウエアは製造物とならないのですが、ソフトウエアを組み込んだシステムの場合は製造物にあてはまる可能性があります。

たとえばソフトウエアが原因でシステムに欠陥がでて、怪我をさせてしまった場合は、損害賠償が適応になります。

また欠陥ですが、安全性を欠いているものをいいます。

欠陥であっても安全性とは関係のない部分(作業ができなくなるなど)は製造物責任法の適応にはなりません。

つまり欠陥において訴訟になった場合、安全性の内容や製造物の特性、通常予見される形態などが判断材料となります。

定義)

第二条 この法律において「製造物」とは、製造又は加工された動産をいう。

2 この法律において「欠陥」とは、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態、その製造業者等が当該製造物を引き渡した時期その他の当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう。

3 この法律において「製造業者等」とは、次のいずれかに該当する者をいう。

一 当該製造物を業として製造、加工又は輸入した者(以下単に「製造業者」という。)

二 自ら当該製造物の製造業者として当該製造物にその氏名、商号、商標その他の表示(以下「氏名等の表示」という。)をした者又は当該製造物にその製造業者と誤認させるような氏名等の表示をした者

三 前号に掲げる者のほか、当該製造物の製造、加工、輸入又は販売に係る形態その他の事情からみて、当該製造物にその実質的な製造業者と認めることができる氏名等の表示をした者

引用:製造物責任法

 

製造物責任法(PL法)が免責される場合

製品に欠陥があることを証明できない場合は、製造物責任法が適応にならず免責されます。

(免責事由)

第四条 前条の場合において、製造業者等は、次の各号に掲げる事項を証明したときは、同条に規定する賠償の責めに任じない。

一 当該製造物をその製造業者等が引き渡した時における科学又は技術に関する知見によっては、当該製造物にその欠陥があることを認識することができなかったこと。

二 当該製造物が他の製造物の部品又は原材料として使用された場合において、その欠陥が専ら当該他の製造物の製造業者が行った設計に関する指示に従ったことにより生じ、かつ、その欠陥が生じたことにつき過失がないこと。

引用:製造物責任法

 

製造物責任法(PL法)が適用になる期間

製造物責任法が適用になるのは、以下のように期間が定められています。

つまり消滅時効があるということです。

しかし損害を知ってから3年など長い期間が設定されているので、初期で問題がなくても安心することはできません。

(消滅時効)

第五条 第三条に規定する損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 被害者又はその法定代理人が損害及び賠償義務者を知った時から三年間行使しないとき。

二 その製造業者等が当該製造物を引き渡した時から十年を経過したとき。

2 人の生命又は身体を侵害した場合における損害賠償の請求権の消滅時効についての前項第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。

3 第一項第二号の期間は、身体に蓄積した場合に人の健康を害することとなる物質による損害又は一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害については、その損害が生じた時から起算する。

引用:製造物責任法

 

メーカーの責任をより具体的にした法律

これまでメーカーが導入した機材などが原因で、大きな事故などにつながったケースは多くあります。

それらを踏まえてメーカーの責任をより具体的にしている法律が製造物責任法です。

つまり法原則の一つである「不注意で他人の権利を侵害し損害を与えた者は,その損害を賠償しなければならない」に関して守っている法律ということです。

簡単に言えば、製品の欠陥が原因で危険な状況に陥った場合損害賠償をできるということです。

 

 

ITにおける製造物責任法の対象とは

それではITにおける製造物責任法の対象を説明していきます。

よく間違えられるのが、システムやプログラムが原因で作業ができなくなったなどと訴訟するケースがあります。

しかし欠陥製造物が原因で起こった状況の場合に損害賠償を受けることができるのですが、この欠陥とは安全性を欠いていた場合を指します。

安全性とは、設計上や製造上、また危険に足しする指示が十分でなかったことがあたります。

これにあてはまるのは、パソコン本体、周辺機器などになります。

しかしプログラムのように形のないものは製造物責任法には該当しません。

つまりプログラムの不具合が原因で、なにか会社の財産に被害があった場合でも製造物責任法の対象外となるのです。

ソフトに関しても同じことがいえます。

しかしソフトの中でも組み込みソフトの場合、ソフトが欠陥で利用者に被害を与えて場合は損害賠償の対象になるケースがあります。

 

 

ITにおける損害賠償を求めた事件の一例

ITにおける損害賠償を求めた事件の一例をご紹介します。

 

日本IBM vs 野村ホールディングス 訴訟問題

2010年~ 野村HDと野村証券がシステムを日本IBMに委託するが、納期が間に合わずシステム稼働が遅延した。

2012年11月 野村HDは日本IBMに開発中止を通告

2013年1月 野村HDは契約解除を表明

野村HDは日本IBMが適切な業務を遂行しなかったとして日本IBMに36億円を求め訴訟、

→請求を棄却

日本IBMが野村ホールディングス(HD)などに対し、システム開発契約で未払いの報酬があるとして、計約5億6000万円を請求した訴訟の控訴審判決が21日、東京高裁であった。野山宏裁判長(大竹昭彦裁判長代読)は、IBM側の請求を棄却した一審東京地裁判決を変更し、野村HDに約1億1000万円の支払いを命じた。

引用:時事通信

この判決の理由は、開発が遅延したのは、野村HDが工程数の削減提案に応じなかったこと、変更要求を多発していたことを上げました。

このため契約通り日本IBMが行った業務に関しては、野村ID支払う必要があるとしたのです。

このように開発が遅延などの業務不履行があった場合でも、その部分にいきつくまでのプロセスが大事なのです。

 

旭川医大事件 発注者が失敗の全責任を負わされ14億円をしはらったケース

2017年に札幌高等裁判所で起きた事件で、旭川医科大学がNTT東日本に発注したシステムが完成しなかった件でなんと発注者の旭川医科大学が約14憶1500万円の支払いを命じられました。

以下ダイヤモンドオンラインより引用します。

旭川医科大学は、2008年8月に、電子カルテを中核とする病院情報管理システムの刷新を企画し、NTT東日本に開発を依頼した。

しかし、プロジェクトの開始直後から、現場の医師たちによる追加要件が相次ぎ、プロジェクトが混乱した。

NTT東日本は、1000近くにのぼる追加項目のうち、625項目を受け入れた上で、仕様を凍結(もうこれ以上要件の追加・変更は行なわないことで合意すること)し、納期も延長することになった。

しかし、仕様凍結後も現場医師らの要望は止まず、さらに171項目の追加項目が寄せられた。

NTT東日本は、さらに追加された171件のうちの136件の項目を受け入れたが、開発はさらに遅延し、結局、旭川医大は期日通りにシステムを納品しなかったことを理由に、契約解除を通告した。

これついてNTT東日本は、「プロジェクトの失敗は旭川医大が要件の追加・変更を繰り返したことが原因だ」と損害賠償を求めた。

しかし、旭川医大は、「NTT東日本が納期を守らず、テスト段階での品質も悪かった」と反論し、裁判になった。

【札幌高等裁判所の判断】

札幌高等裁判所は、「旭川医大に100%の責任がある」として約14億1500万円の支払いを命じる判決を出した。

実は、この裁判は、一審で「失敗の責任の8割がNTT東日本にある」とされていた。それだけに、この逆転判決に大きな反響が起きている。

旭川医大は2017年9月14日、判決を不服として最高裁に上告した。

このケースは上記のケースと同じで、発注者の義務をおこたったということです。

このようなケースを防ぐためには、発注者とベンダーが協力してシステムを作ることが大切です。

この信頼感がないと、大きな事件へと発展することがあります。

極端な例をあげましたが、ITを導入するにあたり、製造物責任法はいかに重要であるかどうかを伝えたくて事例を記載しました。

日本ネットワークセキュリティ協会において、情報漏洩に関する事件の報告しています。

2018年の個人情報漏洩インシデントの分析結果は以下のようになっています。

漏えい人数 561万3,797人

インシデント件数 443件

想定損害賠償総額 2,684億5,743万円

一件あたりの漏えい人数 1万3,334人

一件あたり平均想定損害賠償額 6億3,767万円

一人あたり平均想定損害賠償額 2万9,768円

さらに漏洩の原因は以下のようにまとめられています。

紛失・置き忘れ 116件 26.2%
誤操作 109件 24.6%
不正アクセス 90件 20.3%
管理ミス 54件 12.2%
盗難 17件 3.8%
設定ミス 16件 3.6%
内部犯罪 13件 2.9%
不正な情報持ち出し 10件 2.3%
バグ 8件 1.8%

以上のように不正アクセスが20%を占める他は、ほとんどが従業員のミスとなっています。

従業員のミスより、上記のような大きな被害が発生するということです。

管理を強くしたり、従業員に対して十分な教育をすることはもちろん重要ですが、保険に入っておく必要があることがおわかりになるのではないでしょうか。

 

 

まとめ

ITを導入する場合、企業として心配なのが欠陥品が原因で被害を受けることでしょう。

そのために製造物責任法があるのですが、適用する場合としない場合があるので、ITを導入する場合は知っておくべきことでしょう。

またいずれの場合でも、製品の欠陥が原因であることや因果関係に関して立証しないと成り立たないことも理解しておく必要があります。

最後になりますが、以上のような問題を起こさないためにも発注者とベンダーは常にコミュニケーションをとり信頼関係が必要になるのです。

 

 

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